午前5時58分。
窓の外の空も、まどろみながら
変わらない僕を包み込んでいる。
都会での慌ただしい生活が始まってから
2年が経とうとしていた。
いつだっただろうか
どこまでも突き進んでいく勇敢な、
勇者みたいな存在の君が
前を向けずにいる怖がりな僕に
「きっと、大丈夫。」と
背中を押してくれたあの日は。
僕は、何度も君に助けられた。
君の、いつも変わらない笑顔は
温かくて眩しかった。
午前6時25分。
本来、目覚めの為の
アラームが鳴るのを
見届けながら止めた。
今日もただただ
同じことを繰り返すための
支度を始める。
君を思い出したのは
久しぶりだったように思う。
仕事着を身にまとい
玄関を開けた時
いつもあったはずの
澄み切った青い空は
いつもより
僕を優しく包み込んでくれている、
そんな気がした。
「きっと、大丈夫。」と
背中を押してくれたあの日と同じ、
温かさと懐かしさを覚えた。
駅まで歩く
いつも見慣れた景色。
何となく、
いつもとは違う通勤経路の
路地裏に入ってみた。
何となく、
違う景色を見たくなって
気分を変えたくて…
坂道になっている
路地裏を登り切った先には
小さな公園と
フェンス越しに
町を見渡せる
見晴らしのいい場所が
そこにはあった。
…
ただ、同じことを繰り返す、
そんな日々に変えてしまっていたのは
自分だったんだな。
ありがとう。
また僕は君に助けてもらった気がする。
背中を押してくれたあの日から
ほんの少しだけ、
君のおかげで僕の人生も変えられている。
この先も
君を思い出すためには
僕にとって
十分すぎる出来事なんだ。
-完-
このお話は主人公「僕」が
天然石であるアイオライト「君」と
出会った世界という物語を描いた作品です。
作品名:石の物語
『アイオライト』 -人生の羅針盤-
作者:みなづき村長
『アイオライト』 石言葉
「人生の羅針盤、その導きの先に青き空を。」
最後まで…
読んでいただきありがとうございました。
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