素材との対話

素材との対話

 

最初から、
何かを作ろうとして
素材を手に取ったわけではなかった。

 

机の上に置いたのは、
白く、少しだけ欠けたシーグラス。

 

拾ったときのことも、
使い道も、
今日は特に思い出さなかった。

 

 

触ってみると、
思っていたより冷たくはなくて、
でも、温かいとも言えない。

 

指先に残る感触だけが、
はっきりしていた。

 

 

形は不揃いで、
どこが正面かも分からない。

 

それでも、
眺めていると
自然と置き直したくなる向きがあった。

 

 

こちらが選んでいるつもりでも、
実際は、
素材のほうに
選ばされているのかもしれない。

 

 

何かを足そうとすると、
少し違う気がした。

 

削ろうとしても、
それも違う。

 

 

今日は、
「何もしない」という選択が
一番しっくりきた。

 

 

素材と向き合う時間は、
答えを出すための時間ではなくて、

 

どこまで手を出さずにいられるかを
確かめる時間なのだと思う。

 

 

完成させなくてもいい。
意味づけしなくてもいい。

 

ただ、
同じ時間を過ごしたという事実だけが
残れば、それでいい。

 

 

素材との対話は、
何かを生み出す前に、
一度立ち止まるための時間。

 

 

今日は、
それだけで十分だった。

 

 

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